日本では、農産物の農薬散布は栽培中だけ

日本では、農産物の農薬散布は栽培中だけに行われるのが一般的だ。しかし、欧米など世界の多くの国では、収穫後も散布が広範囲に認められている。

JA全中が独自で検査

厚生省、農水省とも、ポストハーベスト農薬の実態をつかんでいなかった。全国農業協同組合中央会(JA全中)が独自に米国での実態を調査・検査・分析した。1988年2月にまとめた報告書が外国での収穫後農薬についての唯一の資料となっていた。

58物質のうち43が農薬。12は食品添加物

JA全中の調査・検査・分析によると、米国で収穫後に散布されている薬品は計58物質だった。その中の3物質は無害の天然物、12物質は国内でも使用が認められている食品添加物だった。残る43物質が農薬だった。

残留基準があるのは殺虫剤の臭化メチルなど4物質のみ

しかし、このうちの22物質は日本では未登録だった。製造、販売が一切認められていなかった。また、登録されている21の農薬についても、日本で厚生省が残留基準を定めているのは殺虫剤の臭化メチル、キャプタン、マラチオンなど4物質だけだった。ほか1物質は1988年秋から事実上使用禁止になっていた。

参考:https://www.fudokan.jp/

突然変異性など人体への毒性を判定

こうしたことから、厚生省はまず、世界各国の散布状況を調査することにした。国立衛生試験所や大学などの研究機関の協力を求めて個々の作物の残留値を分析、突然変異性など人体への毒性を判定することにした。

小麦、大豆、そば粉など穀物類から

1991年(昭和66年)度実施をめどに、とりあえず、輸入量の多い小麦、大豆、そば粉など穀物類から基準値を決めることにした。その後も順次、果実、野菜類などに広げていく方針だった。

もともと高い濃度で規制値が設定

収穫後農薬は、栽培段階での農薬のように雨で洗い流されることもない。このため、もともと高い濃度で規制値が設定されている。それ故に、現行の国内並みの厳しい基準を設ければ、作物によっては事実上、輸入できない事態ともなりかねなかった。

果実など生で食べる作物は厳しく

このため、厚生省は果実など生のまま食べる作物については厳しくし、加工してから食べる作物については世界的な傾向を見たい、との見解を示していた。

収穫後農薬散布は、全中の調査だと輸入農産物のほとんどに行われていた。すべてについての基準設定には早くても10年はかかると予想されていた。

動画

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